コラム

看護師は離職率の高い職業?退職や転職する理由について解説

総合病院やクリニック、特養老人ホーム、訪問看護等で働く看護師不足が社会問題になってから、随分と時間が経過しました。

ところが時間が経っても、看護師不足は解消していません。

その要因のひとつに「看護師の離職率」があげられます。

本当に看護師の離職率は高いのでしょうか。

最新データから看護師の離職率をチェックし、離職しやすい病院の特徴・離職理由・転職先に求める条件や希望、転職に選びたい職場をわかりやすく解説しています。

看護師の離職率は本当に高いのか?

公益社団法人 日本看護協会が2023年に公表した「2022年病院看護実態調査」によると、2021年度は既卒看護職員、正規雇用看護師、新卒看護師ともに離職率が上昇しています。

前年と比較すると既卒は+ 1.9%、正規は+ 1.0%、新卒は+ 2.1%となり、看護師の離職率上昇は大きな問題です。

離職率が高いということは、患者様に対して必要な医療を満足に提供できなくなるでしょう。

個人病院での離職率が高い

2021年度の看護師離職率の平均は、既卒が16.8%、正規雇用が11.6%、さらに新卒看護師は統計を取り始めて(2005年以降)初めて10%を超え、10.5%になりました。

ただこれは全国の医療機関8,165 施設から集計した結果なので、すべての病院にこの数字が当てはまるわけではありません。

設置主体別に見ると、もっとも離職率が高いのは個人病院となっています。

既卒32.1%、正規雇用14.6%、新卒13.8%と、平均数値と比較しても正規雇用は+ 15.3%、新規雇用+ 3.0%、新卒+ 3.3%と驚くほどの高さです。

病院の規模が小さいほどに離職率が高い

看護師の離職率を、設置主体別ではなく病床規模で見ていきましょう。

99床以下では既卒20.1%、正規雇用12.1%、新卒13.9%となっており、平均と比較しても既卒は+ 3.3%、正規雇用+ 0.5%、新卒+ 3.4%増加しています。

では500床以上の規模の大きな病院ではどうでしょうか。

500床以上では既卒12.8%、正規雇用10.8%、新卒9.3%となっており、平均と比較しても既卒は-4.0%、正規雇用-0.8%、新卒-1.2%と大きく減少しています。

この2つは極端な例ですが、病床数が少ないほど看護師が離職しやすい現実が反映されています。

では個人経営の病院や病床数の少ない小規模病院にはどのような問題があるのでしょうか。

看護師離職率が高い病院の特徴

現在は「ライフワークバランス」の重要性に注目が集まり、医療機関でも仕事と私生活のバランスを図る方向へ転換しています。

ところがその動きに反して無理な休日出勤や残業がある、クリニカルラダーなど教育体制が整っていない病院もあり、そのような職場では看護師が離職しやすいのが現状です。

福利厚生や支援制度が整っていない

新人看護師が入職しても、その日から即戦力になるわけではありません。

専門学校で学んだことと臨床現場との間には隔たりがあるため、時間をかけて技術や知識を習得する必要があります。

そのための教育システムがしっかりしていないと、新人看護師は「仕事ができない看護師」扱いされたり、離職を選んでしまったりする人も増えるでしょう。

中堅クラスの看護師に成長しても、時短勤務ができないとさまざまな問題が発生します。

例えば出産育児のサポート体制不足・院内保育園がない・子どもの行事で休みにくい・有給すらとりにくい・夜勤を強要されるような職場では定着しません。

規模が小さく人材不足

規模の小さな病院は慢性的な人員不足に悩んでいます。

そのため看護師一人がこなす業務量が増えてしまい、常にフル回転です。

看護師のなかには通常の看護業務のほかに、電話受付・検査業務・カルテの出し入れ・窓口での会計・入院手続き・薬剤業務など、他職種の仕事もカバーすることもあります。

これだけ忙しいと、疲労が蓄積して体調を崩す看護師も珍しくありません。

さらに人間関係がギスギスした職場では、精神的な疲れで休職や退職に追い込まれる可能性もあります。

看護師が退職・転職する5つの理由

看護師が退職や転職を選択するとき、その理由をある程度のパターンに分類できます。
女性の場合、結婚や引っ越し、妊娠や出産などライフイベントをきっかけに退職するパターンはわかりやすい例です。
こちらでは、代表的なものを5つチェックしていきましょう。

結婚・出産・育児など

女性が多い看護師の場合、結婚や出産、育児をきっかけに退職する方が多いのが現状です。

仕事を辞めたくなくても、結婚を機に遠方へ引っ越さなければいけなくなった場合、必然的に退職せざるを得ません。

また職場によっては妊娠や出産に対してサポート不足が起こっています。

そのため働きながらの出産、育児を断念するケースや夫婦の考え方、家庭の事情などで退職する場合もあります。

人間関係の悩み

病院で働く看護師といってもさまざまです。

ベテラン看護師から新人看護師、正規雇看護師にパート看護師など、キャリアや職場内での立場には差があります。

ベテラン看護師が新人に暴言を吐く、正規雇用看護師がパート看護師に難しい仕事を押し付ける、無理な命令をするなど人間関係に悩んでいるという看護師は多いです。

看護師の人数が増えれば増えるほど、人間関係は複雑になりやすいです。

超過勤務・夜勤への不満

看護師として入院施設のある大きな病院へ入職すると「夜勤」と無縁ではいられません。

基本的な勤務形態は2交代、3交代などローテーションです。

一見すると、勤務形態が決まっているため仕事とプライベートが両立できると思う方もいるでしょう。

ところが実際に勤務していると患者が急変することもあり、時間通り仕事が終わらないこともあります。

とくに人手の少ない病院ではその傾向が顕著です。

さらに無理な夜勤が続くと肉体的・精神的疲労がたまり、医療事故につながるリスクもあります。

病院の以外の施設に興味がある

看護師が活躍できる場所は医療機関だけではありません。

訪問看護や特養老人ホーム・有料老人ホーム・老健施設・デイケア・一般企業・市町村の保健センター、なかには自衛隊で看護師として働くために中途採用で入隊する方もいます。

これら病院以外の施設で働きたい看護師は、今の職場を辞めてキャリアチェンジしなければなりません。

キャリア・スキルアップしたい

病院で働くうちに「がん看護を究めたい、小児看護をさらに勉強したい」などキャリアの方向性が生まれることがあります。

より専門的な勉強や実務経験を積むために転職を決断することは、積極的で前向きな理由となるでしょう。

キャリアアップのために教育環境の整った病院へ転職すれば、より専門性の高い真のスペシャリストへの道を進めるはずです。

転職先への希望条件

転職は一生のうちに何度も経験できるものではありません。
転職するのであれば、今の職場より好条件・好環境であるかをチェックしましょう。

以下のような点を考慮して、納得できる職場を探すのが後悔しないポイントになります。

人材が揃い勤務体制が整っている

病院に勤務するスタッフの数が揃い、ゆとりのある勤務体制で働ける職場を選びましょう。子どもが小さい場合は夜勤のない外来勤務に配属してくれたり、時短勤務ができたりなど、配慮してくれる職場であれば安心です。

夜勤がある場合も連続勤務にならないよう、シフトにゆとりがある2交代制や3交代制のどちらかを選択できるなど融通の利く職場もおすすめです。

円滑な人間関係が築ける

医療機関では、看護師だけではなく医師や薬剤師、理学療法士などさまざまなスタッフが働いています。

職場のなかで円滑な人間関係が構築できるよう、定期的なミーティングが実施されている点をチェックしてください。

ほかにも個人間の連絡がスムーズで、トップに立つ管理者にマネージメント能力があり適切な指示ができるなど、人間関係に煩わされない職場を選びましょう。

福利厚生が充実している

仕事をするうえで福利厚生はとても重要です。

新卒看護師の場合は、独身寮が完備されていれば生活していくうえで助かります。

健康保険や厚生年金、雇用保険など社会保険への加入はもちろん、退職金制度加入や通勤手当・住宅手当・家族手当などの各種手当にも注目してください。

子供がいる看護師は院内託児所の有無や、託児所がない場合は保育手当がつくかどうかもチェックしましょう。

キャリアアップ制度が整っている

看護師がキャリアアップする方向性には2つあります。

特定分野を突きつめた専門性の高い看護師になること、または管理職として看護師の指導やマネージメントを行うことです。

キャリアアップを希望される方は、キャリアアップ制度が充実している医療機関を選びましょう。

長く勤務することでスキルが磨かれ、給与アップや裁量が広がるメリットがあります。

看護師が転職に選びたい職業

看護師としてスキルを身につけた方にとって、転職先として選びたい職場にはどのようなものがあるのでしょうか。

候補先を絞っている方もいらっしゃるかと思いますが、過去にどのような職場でどの分野の看護をしていたのか、スキルの洗いだしをおこなうと方向性がハッキリ見えてきます。

そのうえで、スキルや資格を生かして活躍できる現場に転職すると、満足度がアップするでしょう。

総合病院・クリ二ック

看護師としてのスキルを生かすには、総合病院やクリニックが最適です。

ただし医療スタッフの入れ替わりが激しい・常に求人が出ている・働いている看護師に余裕がないなどブラック職場は避けましょう。

クリニックは産婦人科や眼科など専門性の高い職場になるため、興味のある診療科目であればチャレンジする価値はあります。

ただ人手が少ない職場は多忙なため、職員の配置などは面接時に確認できるようであれば、確認を行ってください。

特別養護老人ホーム(特養)・有料老人ホーム

高齢者が生活の場として入居している特養老人ホームや有料老人ホームも、看護師が活躍できる職場です。

専門的な医療行為はあまり必要なく、バイタルチェックや簡単な医療処置・服薬管理・日常生活のサポートがメインになります。

ただ入居者が急変したときには、医師と連携して適切に対応しなければならないうえ、ある程度のスキルが必要になります。

訪問看護・デイサービス

高齢者の増加により、訪問看護サービスのニーズは高まっています。

主治医が作成した訪問看護指示書に従い、自宅療養中の利用者のもとに赴き看護サービスを提供します。

デイサービスは、利用者が日帰りで介護サービスを受ける施設です。

医療行為はほとんどなく、バイタルチェックと服薬指導、介護がメインです。

これらの職場は夜勤がないため、肉体的な負担は比較的軽くなります。

重症心身障害者施設

心身に重い障害をもった方に医療サポートを行います。

看護師はバイタルチェックや服薬指導、日常生活のサポートが基本業務です。

他にも障害者とコミュニケートしながら各種作業を手伝ったり、容体が急変したときには救急車を呼んだり、適切な対応が求められます。

配置される看護師の数が少ないので、ある程度のキャリアを積み自分で判断できる看護師向きの職場です。

保育園

私立保育園には園児の人数を問わず、最低1名の看護師を配置することが義務づけられています。

主な業務内容は園児の体調管理・園内の衛生管理・手洗いやうがいの指導・アレルギー対応・保護者への保健指導・保育士の健康管理などです。

感染対策やアレルギー対策はかなり注目されていますので、園児や保育士の健康を守る重要な仕事が可能です。

保健センター

市町村に設置された保健センターでは、保健師や看護師、栄養士などの専門スタッフが常駐し、地域住民のための保健サービスを提供しています。

健康相談の職員として住民にアドバイスを与えるほか、健診時や予防接種時にはスタッフとしてサポートします。

保健センターには夜勤がなく、土日祝日が休めることもあり人気のある転職先です。

ただ求人数は、保健師の方が多い傾向にあります。

まとめ

2021年度の看護師離職率は既卒・正規雇用・新卒のすべてで上昇しました。

新型コロナウイルス感染拡大により看護師にかかる負担が重くなったことも一因と考えられます。

今後もより働きやすい職場を求めて、看護師の離職・転職の傾向は続くと考えられるでしょう。

今の職場ではスキルが磨けない、人間関係が悪いなどハッキリした不満点のある方は、医療法人錦秀会へ転職することで環境を良い方向へ変えてみましょう。